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分析科学&分析化学実験(2):吸光光度分析法・蛍光光度分析法

author : A.Mizunoawa   [ 一般 ]
2017.08.30 Wednesday 15:00 | - | trackbacks(0) | 

みなさん、ご機嫌いかがお過ごしですか。応化3回生のA.Mizunoawaです。

前回の記事では化学における分析法の概観を紹介しましたが、今回からの記事ではしばらく個別の分析手法について紹介していこうと思います。まずは吸光光度分析法・蛍光光度分析法から。

世の中には紫外線や可視光を吸収したり、吸収した後に発光したりする物質が存在します。

量子力学の説明で述べたように、分子のエネルギー状態は量子的、すなわちとびとびの値を取ります。普通の梯子は間隔が一定ですが、ここでは間隔がまばらな梯子をイメージしてください。地面に近いほどエネルギーは低く、天空に近いほどエネルギーは高いものとします。分子内にある電子は全てエネルギーを有していますが、そのエネルギーの大きさは梯子の足を掛ける部分と同じ高さにしか存在せず、中途半端に足掛けと足掛けの間の値などを取ることはできません。足掛けのことはエネルギー準位と呼びます。エネルギー準位は下から順に1s軌道、2s軌道、2p軌道(3つある)、3s軌道、3p軌道(3つある)、3d軌道(5つある)……と名付けられていて、1,2,3と名の付く軌道群が高校化学でいうところのK殻、L殻、M殻に対応しています。なお、複数あるエネルギー準位は全て同じ大きさになります。電子は原則としてエネルギーがもっとも低いエネルギー準位から順に収容されていき、1つの軌道につき電子は最大で2個入ります。つまり、Heなら2個の電子が1s軌道に収容されK殻で閉殻し安定、Neなら10個の電子が1s軌道から2p軌道までそれぞれ2個ずつ収容されL殻で閉殻し安定──となるわけです。これらは希ガスですから単原子分子として安定に存在できることにも納得できます。もしも原子が奇数個、たとえばHならば、1個の電子が1s軌道に収容されている状態になるわけですが、これは不安定なのでH原子が2つ集まりそれぞれのH原子の1s軌道が合体(結合という)します。2つの軌道が結合することで新しく生まれる軌道も同じく2つなのですが、1つはもともとのエネルギー準位よりも低位置にあり、もう一つは高位置にあります。それぞれを結合性軌道、反結合性軌道と呼ぶのですが、もともとH原子の1s軌道にあった電子は2つともこの低い方のエネルギー準位である結合性軌道に移動します。そうすることで結合性軌道には2つの電子が収容され閉殻となり安定になりますから、H原子2つよりもH2分子として存在していた方がより安定というわけです。実際、Hは通常二原子分子として存在しています。

このような前提を踏まえた上で、吸光光度分析法について簡単に説明します。ある分子において全ての電子がもっとも低いエネルギー準位に順番に詰まっていった状態、すなわちもっともエネルギー的に安定な状態を基底状態と言います。この状態から何らかのエネルギーが電子に与えられて電子がより高い位置のエネルギー準位に一時的に持ち上がった状態を励起状態と言います。この何らかのエネルギーというのが紫外線および可視光であり、基底状態から励起状態になるために電子が持ち上がったエネルギー準位間の差にあたるエネルギー量がこの光が持つエネルギー量と同じでなければいけません。光は電子が励起するためのエネルギーに使われるため、現象としては分子が光を吸収することになるわけです。

もちろん、励起状態は基底状態に比べて不安定ですからすぐに基底状態に戻るわけですが、電子が高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に落ちてくるときに放出するエネルギーが光という形態をとっていればそれが「蛍光」という現象として現れてきます。しかしこれは必ずしも光という形で現れるわけではなく、熱として放出されることもあり、その場合には吸光は起こるが蛍光は起こらないということになります。

吸光光度法では試料に適当な波長の(つまり、適当なエネルギーの)単色光を透過させ、その透過率を調べることでどれくらい光の吸収が行われたかを知り(ランベルト・ベールの法則と呼ばれる式を使って計算する)、その割合を元に分子の構造を推測します。メリットは簡便で感度・精度ともに優れており再現性も良いことですが、可視・紫外部に吸収が無い物質は適当な呈色試薬が存在しない限り測定ができないというデメリットがあります。

一方で蛍光光度法は、蛍光の強度を測定することで物質の定量分析を行うことができます。吸光光度法よりも応用範囲は限られますが精度は1〜3桁ほど良く、非常に低濃度の物質の定量分析に用いられています。

上記の文章を読んだだけで電子の軌道のくだりを理解するのは高校生には恐らく難しいと思います。しかし、大学における化学を理解する上ではもっとも基本的な考え方の一つになりますので、興味がある方は自主的に調べて理解を深めてみてください。

それでは、今回はこの辺で。See you again!

 

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